国連中国代表権問題をめぐる国際関係 (1961–1971)

張 紹鐸 著

東西冷戦、中ソ対立、ベトナム戦争、アフリカ新興諸国の登場などを歴史的背景としながら、蒋介石外交の二面性に隠された一貫性に対し、アメリカ外交政策の決定過程を貴重な一次資料にもとづいて跡付けた。(2007.12)

定価 (本体5,400円+税)

ISBN978-4-87791-175-1 C3031

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目次

著者紹介

張 紹鐸

まえがき

はしがき

この著作は国連における中国代表権が台湾の国民政府から大陸の中国政府に移行していった過程を外交史的に新しい視点から究明しようとしたものである。

この間のアメリカ外交は、よく知られているように、反共ないし反中国的イデオロギーを基本とするものから、具体的利害関係、国際政治の力関係を反映するリアリズム外交に重心を移していった。特にニクソン大統領は、本質的には反共イデオロギーを内在させる一方、利害関係、多極化の動向、権力関係を重視するキッシンジャー外交を活用し、台湾の対米友好関係を保持しながらも大陸中国を中心とする対中国新政策に転換していった。この間のアメリカ外交政策の決定過程を興味深い資料によって跡づけていったところに本書の第1の特徴がある。

他方、台湾の蒋介石政権も、原則的に「二つの中国」の発想を拒否しながら、国際関係とアメリカの動向を現実主義的に分析し、タテマエとしての理念的原則と現実の米台同盟の変化を巧みにリードする"二重外交"を展開した。台北政府が予想以上に長期間にわたって国連における代表権を保持し、追放された後もその国際的影響力を残したことを外交史的に明らかにしたものは従来の中国外交史研究には見られなかった。ここに本書の第2の、しかも最も大きい特徴がある。

さらに、当時の国際関係は、アフリカ諸国などの国際的発言権の上昇、日本、カナダ、イタリア、オーストラリアなどの相対的地位の向上、中ソ対立の進展などによって新冷戦期を反映していた。この間の機微を台湾とアメリカは巧みに利用した。この間の国際的外交戦を時代に合わせて分析したところに、本書の第3の特徴がある。

もちろん中国の国連代表権問題をめぐる各国の外交史研究は、まだその緒に就いたばかりである。根本資料である外交文書の公開も、2007年現在なお進行途上である。この時期の外交史研究が進むと、北東アジア国際関係史に対する理解は大幅に変わる可能性もある。特に中華民国(台湾)の国際的役割とこれに対する新解釈は重要問題となるであろう。そしてその可能性は、すでに1961-71年の転換過程の中に萌芽がある。本書は北東アジア外交史のこのような現代史的側面を、初めて本格的に取り上げたものである。

なお本著の基となっているものは2007年島根県立大学大学院北東アジア研究科に提出された学位論文(社会学博士)で、指導教授は宇野のほか鹿錫俊教授、別枝行夫教授(本書あとがき参照)である。

島根県立大学長 宇野重昭

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