本書は、2010年12月17日、東京市ヶ谷にあるJICA研究所にて開催された国際シンポジウム「日中韓における都市社会の高齢化 ―その対策と課題―」で報告された論文をまとめたものである。このシンポジウムは(財)東京市政調査会が主催し、ソウル市立大学租税財政研究所(地方税研究所より改称)、中国復旦大学日本研究センターの協賛により実施された。
東京市政調査会は、2006年に上記のふたつの研究所と研究提携を結び、2006年上海、2007年東京、2008年ソウル、2009年上海でシンポジウムを開催してきた。また、その研究成果として、『東アジア大都市のグローバル化と二極分化』(2006年)、『膨張する東アジア大都市 ―その成長と管理―』(2007年)、『東アジアにおける公営企業改革』(2008年)、『東アジアにおける大都市における環境政策』(2009年)、『東アジアにおける都市の貧困』などを、いずれも国際書院より出版してきた。
東京市政調査会は、1922年2月、当時の東京市長後藤新平を創立者として設立された研究所である。中正独立の調査機関設置を構想していた後藤は、当時のニューヨーク市政調査会(New York Bureau of Municipal Research)をモデルとした提案をおこなった。これに安田銀行(現在のみずほ銀行)の創立者である安田善次郎氏が賛同、350万円もの資金を寄付し、市政会館と日比谷公会堂が建てられた。現在、日比谷公会堂は東京都が管理しているが、市政会館は東京市政調査会が管理運営し、これを東京市政調査会は財政的な基盤としている。以来、東京市政調査会は財政的な独立を保ち、独立自主の研究活動を展開してきた。1925年より毎月『都市問題』を発行し続け(戦争により一時中断)、2009年には第100巻を迎えたところである。
後藤新平が範を求めたのは米国であった。近年では、韓国、中国等のアジア諸国が急速な発展を遂げ、さまざまな場面で、域内の交流も増えてきた。類似した課題も多い。そこで、東京市政調査会では欧米諸国とともに東アジアにおける研究者や研究機関との交流を深めるとともに、ソウル市立大学租税財政研究所、中国復旦大学日本研究センターとは、毎年、域内での共通した課題を取り上げ、相互の共通した課題を議論することとしている。今回取り上げた高齢化問題は、日本のみでなく、韓国や中国(特に都市部)では今後急速に高齢化が進むことが予測され、その対策が急がれている。本書では、1章から3章までが日本、4章と5章が韓国、6章から8章までが中国をそれぞれ扱った論文である。
最後になるが、東アジアに関するわれわれの研究に「希少価値」を見出され、厳しい出版状況にもかかわらず、ご協力いただいている国際書院の石井彰社長に深く御礼申しあげたい。
2011年9月1日
五石敬路
Copyright © KOKUSAI SHOIN CO., LTD. All Rights Reserved.