21世紀の思想的課題 転換期の価値意識

岩佐茂・金泰明

近世、近代から現代にかけての世界の歴史を、こんにち、グローバルな転換期を迎えている世界の思想的な挑戦と捉え、日本、中国の哲学研究者が総力をあげて応える手がかりを見出す試みである。(2013.10.1)

定価 (本体6,000円 + 税)

ISBN978-4-87791-249-9 C1031 427頁

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目次

はじめに ……岩佐 茂、金泰明

著者紹介

[] ※編者

竹田青嗣 早稲田大学国際教養学部教授

山脇直司 星槎大学共生科学部教授、東京大学名誉教授

※金泰明 大阪経済法科大学法学部教授

山根共行 大阪経済法科大学教養部教授

苫野一徳 日本学術振興会特別研究員[PD]

藁科智恵 東京外国語大学大学院博士後期課程

李徳順 中国政法大学教授

馬俊峰 中国人民大学教授

呉向東 北京師範大学教授

※岩佐茂 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員教授、一橋大学名誉教授

高田純 札幌大学外国語学部教授

大河内泰樹 一橋大学大学院社会学研究科准教授

渡辺憲正 関東学院大学経済学部教授

郭建寧 北京大学マルクス主義学院院長、 教授

王東 北京大学哲学系教授

賈向雲 北京大学大学院博士後期課程修了

聶錦芳 北京大学哲学系教授

武者小路公秀 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター特任教授

鈴木規夫 愛知大学国際コミュニケーション学部学部長、教授

鳥羽美鈴 関西学院大学社会学部准教授

豊子義 北京大学哲学系教授

孫偉平 中国社会科学院研究員

楊学功 北京大学哲学系副教授

[]

李洪权 北京大学国合作部副部(李洪権・北京大学国際部副部長)

まえがき

はじめに

本書に収められた諸論文は、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センターと北京大学哲学系の共催によって、2011年9月16日、17日に北京大学内国際会議場において開催された日中哲学シンポジウム『21世紀の思想的課題転換期の価値意識』で発表されたものである(使用言語は、日本語と中国語ならびに一部英語)。シンポジウムでは、日中の研究者・哲学者26名が、3つの分科会に別れて各々のテーマで報告した。

まず、25年間にわたる本学と北京大学との学術交流の来歴を簡単に述べておきたい。大阪経済法科大学は、1986年に北京大学との間に学術交流協定を交わした。それを受けて、本学哲学研究室と北京大学哲学系との共催で、北京大学で、3回にわたる日中哲学シンポジウムが開催された。第一回目は1988年、第二回目は1991年に、「日中唯物弁証法シンポジウム」として開催された。第三回目は1998年に、「世紀の交における哲学思考」のテーマで開催された。

3回にわたる日中哲学シンポジウムに関しては、いずれも日中両国で報告集が出版されている。日本語版は、第一回目が『現代における唯物弁証法』(1989年)、第二回目が『現代社会と唯物弁証法』(1993年)、第三回目が『世紀の交における哲学思考』(1999年)として、いずれも大阪経済法科大学哲学研究室・北京大学哲学系共編で、大阪経済法科大学出版部から論文集として出版されている。

今回の日中哲学シンポジウム「21世紀の思想的課題転換期の価値意識」は、第四回目に相当するといえよう。それまでの三回のシンポジウムが主にマルクス哲学の領域における報告・議論を中心に展開されたのとは異なり、今回はマルクス哲学・近代哲学・現代思想という3つの哲学・思想領域に分かれて報告・議論したことに1つの特徴がある。この点に関して、当時の武者小路公秀・大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長がシンポジウム開催主旨文で述べた問題意識のなかに、「第四回目」の日中哲学シンポジウムの位置と意義が語られている。以下、要点を記したい。

「本シンポジウムは、今日、グローバルな転換期を迎えている世界の思想的な挑戦に、日中両国の哲学研究者が応える手掛かりを見出す試みとして、時宜にかなったシンポジウムである。

今、冷戦の終焉とソ連の崩壊があった1980年代から続いていた米国を中心とするグローバル化を経験した世界は、9.11事件に続くリーマン・ショックによって政治・軍事的にも経済・金融的にも不安定化し、特に生態系の破壊によって今日のグローバル化した金融資本主義の持続不可能なことが明らかになっている。この歴史的な時点をどのように捉えるか、という問題は、自然科学・社会科学・人間科学が学際的に捉えるべき課題である。近世、近代から現代にかけての世界の歴史を巨視的にとらえるマクロ歴史学の立場で、今日のグローバルな転換期をとらえるならば、次の三つの歴史的な運動が転換期を迎えていると考えられることができる。第一には、近世西欧社会に成立した啓蒙思想がある。第二には、啓蒙思想、特に自由主義を自由市場主義として政治経済的制度化した資本主義が挙げられる。そして、第三に、西欧に端を発した啓蒙思想と資本主義政治経済を世界に普及させた「近代化」に反応して、非西欧諸地域で形成された多様な内発的な近代化の試みが注目される。その意味で、本シンポジウムでは、まず、資本主義の構造を明らかにしたマルクスの思想をもとにして人間と自然・社会を捉えなおし、そのうえで、啓蒙思想を出発点とする近代哲学の観点から、人間と共同性をとりあげ、最後に、現代についての歴史的な反省をもとにして、西欧に発して全世界に波及した近代化とその内発的な受容の多様性について議論することになっている」

主旨文で示された問題意識に沿う形で日中哲学シンポジウムでは、第1分科会「人間と自然・社会存在論的と価値論的(マルクス哲学の観点を踏まえて)」、第2分科会「個と共同性(共生)近代哲学の観点からのアプローチ」、第3分科会「近代化と多様性現代における歴史的反省」が設定された。

シンポジウムでは分科会での報告に先立ち、まず李岩松北京大学副学長、呉清達本学教授の開会挨拶の後、黄楠森北京大学哲学系教授と岩佐茂本学アジア太平洋研究センター客員教授が挨拶をおこなった。さらに王東北京大学哲学系院長と武者小路公秀本学アジア太平洋研究センター所長(現本学特任教授)が基調報告をおこなった。

本書には紙幅の関係上、22本の論文を掲載した。中国側の論文は李洪北京大学国合作部副部(李洪権北京大学国際部副部長)が中心になって訳され、それを編者である岩佐茂と金泰明がリライトした。

報告集の出版が学術の発展、日中の学術交流に寄与することを希望するとともに、この場を借りて、シンポジウムに参加した日中の研究者とシンポジウムの成功のために尽力した両大学の関係者諸氏にお礼を申し上げたい。

岩佐茂、金泰明

索引

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