戦時体制と法学者 1931~1952

小野博司・出口雄一・松本尚子 編

公法学・私法学・刑法学・経済法/社会法、それぞれの学問分野を可能な限り取り上げ、戦時期における法学者の格闘と、その営為としての「戦時法学」の実態に迫り、21世紀の法および法学研究の羅針盤の発見を見通す作業の書である。(2016.3.20)

定価 (本体5,600円 + 税)

ISBN978-4-87791-272-7 C3032 415頁

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目次

著者紹介

編著者・訳者紹介(掲載順) *は編者

出口雄一(でぐち・ゆういち)*
1972年生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。桐蔭横浜大学法学部教授(日本近現代法史専攻)。
主な業績:「日本近現代史における市民の刑事司法参加」後藤昭編『東アジアにおける市民の刑事司法参加』(国際書院、2011年)、「戦時・戦後初期の日本の法学についての覚書(1)(2・完)――「戦時法」研究の前提として」『桐蔭法学』19巻2号、20巻1号(2013年)、「六法的思考――法学部教育の歴史から」桐蔭法学研究会編『法の基層と展開――法学部教育の可能性』(信山社、2014年)ほか。
松本尚子(まつもと・なおこ)*
1966年生まれ。一橋大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。フランクフルト大学法学博士。上智大学法学部教授(西洋法制史専攻)。
主な業績:「カール・シュミット」勝田有恒ほか編『近世・近代ヨーロッパの法学者たち』(ミネルヴァ書房、2008年)、「ドイツ・プロイセン勧解人制度とフェッヒェルデの運用例」川口由彦編著『調停の近代』(勁草書房、2011年)、「近世ドイツの治安イメージとポリツァイ――廷吏から治安部隊へ」林田敏子ほか編著『警察』(ミネルヴァ書房、2012年)ほか。
小野博司(おの・ひろし)*
1979年生まれ。大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪大学博士(法学)。神戸大学大学院法学研究科准教授(日本近代法史専攻)。
主な業績:「1920年代における行政裁判制度改革構想の意義――臨時法制審議会における行政裁判所の役割を手掛かりにして」『法制史研究』58号(2009年)、「近代法の翻訳者たち(1)」『法政策学の試み』16集(信山社、2015年)、「東アジア近代法史のための小論」『神戸法学年報』29号(2015年)ほか。
小石川裕介(こいしかわ・ゆうすけ)
1981年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都大学博士(法学)。後藤・安田記念東京都市研究所研究員(日本法史専攻)。
主な業績:「瓦斯事業法の成立と市町村ガス報償契約(1)~(3・完)――近代日本における公益事業規制主体の移行」『法学論叢』168巻5号・168巻6号・169巻3号(2011年)、「戦前期における公益事業の公営化――都市ガス事業を中心として」『都市問題』103巻8号(2012年)、「ガス事業報償契約の運用と解消過程――東京・大阪・名古屋を中心として」『都市問題』104巻9号(2013年)ほか。
岡崎まゆみ(おかざき・まゆみ)
1985年生まれ。明治大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。帯広畜産大学人間科学研究部門専任講師(日本/東アジア近代法史専攻)。
主な業績:「식민지기 조선 민사법의 호주권 기능――메이지 민법의 「家」제도와의 비교분석적 접근」『法史學研究』47號(2013年・韓国)、「植民地期朝鮮における祭祀承継の法的意義――『朝鮮高等法院民事判決録』の分析を中心に」『帯広畜産大学学術研究報告』35号(2014年)、「総督府判事・野村調太郎の法思想と裁判実務への影響――大法院記録保存所所蔵・光復前民事判決原本を通して考える」松田利彦・岡崎まゆみ編『植民地裁判資料の活用――韓国法院記録保存所所蔵・日本統治期朝鮮の民事判決文資料を用いて』(国際日本文化研究センター、2015年)ほか。
井上茂子(いのうえ・しげこ)
1954年生まれ。東京大学大学院社会学研究科国際関係論専門課程博士課程単位取得退学。上智大学文学部教授(史学・西洋近現代専攻)。
主な業績:「ナチ時代の女性労働政策――イデオロギーと現実」川越治・矢野久編『ナチズムの中の20世紀』(柏書房、2002年)、『近代ドイツの歴史』(共編著:ミネルヴァ書房、2005年)、『ドイツ文化史入門』(共編著:昭和堂、2011年)、「『人道に対する罪』の成立について――ニュルンベルク国際軍事裁判前史」長町裕司ほか編『人間の尊厳を問い直す』(上智大学出版、2011年)、「ナチ時代の『風化』現象にいかに対抗するか――ドイツの大学の試みから」上智大学文学部史学科編『歴史家の窓辺』(上智大学出版、2013年)ほか。
雨宮 昭一(あめみや・しょういち)
1944年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。茨城大学・獨協大学名誉教授(政治学・日本政治外交史・地域政治論専攻)。
主な業績:『戦時戦後体制論』(岩波書店、1997年。なお2012年復刊)、『総力戦体制と地域自治――既成勢力の自己革新と市町村の政治』(青木書店、1999年)、『占領と改革』(岩波書店、2008年)ほか。
水林彪(みずばやし・たけし)
1947年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。早稲田大学法学学術院特任教授(比較法社会史専攻)。
主な業績:『封建制の再編と日本的社会の確立』(山川出版社、1987年)、『天皇制史論――本質・起源・展開』(岩波書店、2006年)、『国制と法の歴史理論――比較文明史の歴史像』(創文社、2010年)ほか。
三橋陽介(みつはし・ようすけ)
1976年生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科一貫制博士課程単位取得退学。中央大学経済学部・神奈川大学経営学部非常勤講師(東洋法史専攻)。
主な業績:「日中戦争期の戦区検察官――中華民国重慶国民政府法制の一考察」『社会文化史学』50号(2008年)、「日中戦争以前の中国国民党政権の司法官――司法の党化と党員司法試験」『比較法雑誌』42巻2号(2008年)、「中国国民政府初期における反省院の設置と人事――党系統の情報機関と司法機関の連繋」『法制史研究』61号(2012年)ほか。
伊藤孝夫(いとう・たかお)
1962年生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。京都大学大学院法学研究科教授(日本法史専攻)。
主な業績:『大正デモクラシー期の法と社会』(京都大学学術出版会、2000年)、『瀧川幸辰』(ミネルヴァ書房、2003年)、『日本法制史』(共編著:青林書院、2010年)ほか。
三成美保(みつなり・みほ)
1956年生まれ。大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(法学・大阪大学)。奈良女子大学研究院生活環境科学系教授(ジェンダー法学・ジェンダー史・比較法史専攻)。
主な業績:『ジェンダーの法史学――近代ドイツの家族とセクシュアリティ』(勁草書房、2005年)、『講座ジェンダーと法第1巻 ジェンダー法学のインパクト』(共編著:日本加除出版、2012年)、『歴史を読み替える――ジェンダーから見た世界史』(共編著:大月書店、2014年)ほか。
中山竜一(なかやま・りゅういち)
1964年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程中途退学。大阪大学大学院法学研究科教授(法理学・法思想史専攻)。
主な業績:『二十世紀の法思想』(岩波書店、2000年)、『ヒューマニティーズ 法学』(岩波書店、2009年)、「リスク社会における公共性」『岩波講座哲学第10巻 社会/公共性の哲学』(岩波書店、2009年)ほか。
岩井淳(いわい・あつし)
1958年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程(憲法学専攻)。
荒邦啓介(あらくに・けいすけ)
1985年生まれ。東洋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。東洋大学法学部非常勤講師(憲法・憲法史専攻)。
主な業績:「戦中の辻清明――明治憲法の割拠性を考える上での一視角」『東洋法学』57巻3号(2014年)、「日本国憲法74条と「旧憲法における副署の残照の影響」」『東洋大学大学院紀要(法・経営・経済)』51集(2015年)、「自衛隊法7条の憲法72条との整合性――「最高の」を鍵とした自衛隊法7条制定過程の再検討」『比較憲法学研究』27号(2015年)ほか。
ミヒャエル・シュトライス(Michael Stolleis)
1941年生まれ。法学博士。前マックス・プランクヨーロッパ法史研究所所長、フランクフルト大学名誉教授。
主な業績:Gemeinwohlformeln im nationalsozialistischen Recht, Berlin 1974(『国民社会主義法における公共の福祉の定式』)、Geschichte des öffentlichen Rechts in Deutschland(4 Bde.), München 1988-2012(『ドイツ公法史』全4巻)、Geschichte des Sozialrechts in Deutschland: Ein Grundriss, Stuttgart 2003(『ドイツ社会法史』)。
周圓(しゅう・えん)
1981年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。東洋大学法学部法律学科講師(西洋法制史・法思想史専攻)。
主な業績:「丁韙良の生涯と『万国公法』漢訳の史的背景」『一橋法学』9巻3号(2010年)、「丁韙良『万国公法』の翻訳手法――漢訳『万国公法』1巻を素材として」『一橋法学』10巻2号(2011年)、「アルベリコ・ジェンティーリの正戦論――『戦争法論』1巻における「動力因」と「質料因」を中心に」『一橋法学』11巻1号(2012年)、「アルベリコ・ジェンティーリの正戦論――『戦争法論』2巻における「形相因」を中心に」『一橋法学』12巻3号(2013年)ほか。
宇野文重(うの・ふみえ)
1972年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。尚絅大学文化言語学部准教授(日本近代法史専攻)。
主な業績:「明治民法起草委員の『家』と戸主権理解――富井と梅の『親族編』の議論から」『法政研究』74巻3号(2007年)、「日本近代家族法史を中心とした『法の継受と創造』に関する研究史」水林彪編著『東アジア法研究の現状と将来――伝統的法文化と近代法の継受』(国際書院、2009年)、「明治前期『弟子年季奉公』の雇用契約をめぐる下級審判決の分析」『法政研究』81巻3号(2014年)ほか。
高橋裕(たかはし・ひろし)
1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。神戸大学大学院法学研究科教授(法社会学専攻)。
主な業績:「司法改革におけるADRの位置」『法と政治』51巻1号(2000年)、「消費者信用と裁判所利用」林信夫・佐藤岩夫編『法の生成と民法の体系』(創文社、2006年)、『エコノリーガル・スタディーズのすすめ』(共編著:有斐閣、2014年)ほか。
林真貴子(はやし・まきこ)
1968年生まれ。大阪大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。近畿大学法学部教授(日本法制史専攻)。
主な業績:『統計から見た明治期の民事裁判』(共編著:信山社、2005年)、『法の流通』(共編著:慈学社,2009年)、『統計から見た大正・昭和戦前期の民事裁判』(共編著:慈学社、2011年)、「内外交渉訴訟における英国弁護士の役割」(『阪大法学』63巻3=4号、2014年)ほか。
坂井大輔(さかい・だいすけ)
1984年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程(日本法制史専攻)。
主な業績:「穂積八束の『公法学』(1)(2・完)」『一橋法学』12巻1号・2号(2013年)、「穂積八束とルドルフ・ゾーム」『一橋法学』15巻1号(2016年)ほか。
児玉圭司(こだま・けいじ)
1977年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程単位取得退学。国立舞鶴工業高等専門学校人文科学部門准教授(日本近代法史専攻)。
主な業績:「明治初期における監獄制度の一転機――既決囚の発見」鈴木秀光ほか編『法の流通』(慈学社出版、2009年)、「明治前期の処遇にみる国事犯」堅田剛編『加害/被害』(国際書院、2013年)、「明治前期の監獄における規律の導入と展開」『法制史研究』64号(2015年)ほか。

あとがき

あとがき

本書は、2010年10月の活動開始から、2015年6月の法制史学会東京部会との共催の形で行なわれたミニシンポジウムに至るまでの戦時法研究会の共同研究の成果を、一書にまとめて世に問うものである(なお、2014年6月1日に行なわれた、法制史学会第66回総会ミニシンポジウム「戦時・戦後における「経済法」―比較法的観点から」の成果の要旨は、別書において公表される予定となっている)。戦時法研究会の成立に至る経緯は、第1章第1節の「本書の分析視角」の冒頭で既に言及したところであるが、編者となった3名は、小野博司と出口雄一が日本法制史の観点から、松本尚子が西洋法制史の観点から、戦時下の法と法学のあり方について以前より関心を抱いており、一橋大学のアジア研究教育拠点事業「東アジアにおける法の継受と創造」に参加する過程で、より深い共同研究の可能性を模索していた。戦時下の法と法学への関心は、小野は外地法制から、出口は占領法制から、松本はナチス法制からそれぞれ出発している。研究会の組織に先立って2010年7月に国立のロージナ茶房で行った準備会では、お互いの問題関心に即した乏しい材料を持ち寄りながら意見交換を行うことになったが、依拠すべき先行業績の少ないこの研究対象にどのように接近すべきかという困難な課題を前に、まるで学生時代に戻ったかのように自由闊達な意見交換が行われたことを思い起こす。法制史の領域においてはほとんど未踏の荒野であるが故に、今後どのように「戦時体制」の法と法学の全体像を描いていくことが出来るか、という課題は、編者を含めた研究会の構成メンバーの学問的な好奇心を掻き立てる、極めて魅力的なテーマであった。

研究会の活動を開始してから本書の刊行に至るまでの5年余りの期間に、本書が取り扱う対象である「戦争」と「法」に関する検討についてのアクチュアリティは(残念ながら、と言うべきであろう)飛躍的に増大した。2015年に戦後70年を迎えた日本においては、「立憲主義」や「法治主義」といった、戦後日本社会において法学者たちがその重要性を強調し続けてきた理念が、「戦時体制」を想起せざるをえないような形で動揺し、その価値が根底的に疑われるに至る事態が進行している。研究会を組織した当初にはほとんど想定していなかったことではあるが、我々の共同研究の成果が、現在進んでいる「戦争」と「法」に関する変動を冷静に分析する視座を提示することが出来ているのであれば幸いである―いささか複雑な感覚を抱かざるを得ないが。

本書では、上述の準備会の席で話し合われたささやかな研究計画すら実現できていない部分も少なくないが、それでも、一応の成果を活字として公表するに至るまでには、数多くの方の協力が不可欠であった。

まず、なんといっても、戦時法共同研究に関心を抱き、研究会に参加いただいた方々がいなければ、この書籍は成立しなかった。年に3回の研究会及びミニシンポジウムを5年以上に亘って継続することが出来たのは、これらに積極的に参加いただいた方々のおかげである。本書の射程の限界から、すべての方にご寄稿いただくことは叶わなかったが、研究会及びミニシンポジウムにおいて報告及びコメントを引き受けていただいた以下の各氏に、特に感謝を申し上げたい(登壇順、2016年3月の第18回研究会まで)。金昌禄氏、趙暁耕氏、高橋良彰氏、石川健治氏、山口陽氏、岡田健一郎氏、岩垣真人氏、小島慎司氏、泉水文雄氏、永江雅和氏、矢切努氏、服部寛氏、遠藤泰弘氏、宮平真弥氏、久保秀雄氏。また、上述のアジア研究教育拠点事業「東アジアにおける法の継受と創造」と平行して行われた比較近代法史研究会(通称「日曜研究会」)では、2008年7月に広渡清吾氏をお招きして、同氏の著書『法律からの自由と逃避』(日本評論社、1986年)について小野と出口が「書評」を行ない、広渡氏から直接コメントをいただく貴重な機会を得た。若手研究者に出会いの場を提供し、そして新たな構想を生み出すきっかけとなった、自由かつ知的緊張感に満ちた同研究会を主催された水林彪氏と、会の事務局を務めてくださった宇野文重氏への感謝は尽きない。

本書の土台となった研究会は、ミニシンポジウムを除いてすべて上智大学において継続して行なわれた。本書の刊行にあたっては、上智大学法学部個人研究成果発信奨励費、及び、上智大学研究成果公開支援事業「学術図書出版支援プログラム」の助成を受けている。更に、研究会活動にあたっては、2014年度及び2015年度に、末延財団から助成金の補助を受けた。ここに記して感謝を申し上げる。

最後になったが、出版事情の大変厳しい中、快く本書の刊行をお引受けいただき、書籍の完成に至るまで行き届いたご配慮をいただいた国際書院の石井彰氏に、執筆者を代表して心よりの御礼を申し上げたい。

2016年3月

小野博司・出口雄一・松本尚子

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