国際機構論[活動編]

吉村祥子・望月康恵 編著
書影『国際機構論[活動編]』

国際機構論における「総合編」に続く第2巻に当たる本書[活動編]では安全保障、軍縮、人権、開発協力、経済、環境、文化、交通通信など各分野の活動を取り上げ国際機構の今日的役割を明らかにする。(2020.7.15)

定価 (本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-87791-305-2 C3032

目次

  • はしがき
  • 第1章 紛争の解決と安全保障
    • 第1節 武力行使の違法化と国際社会の組織化による平和の維持
    • 第2節 国際社会の組織化による紛争の平和的解決
    • 第3節 集団安全保障 ――国連憲章第7章を中心に
    • 第4節 安全保障概念の拡大と国連の機能
  • 第2章 平和維持と平和構築
    • 第1節 平和維持活動(PKO)
    • 第2節 平和構築
  • 第3章 武器・兵器の国際的規制
    • 第1節 交渉の場としての国際機構
    • 第2節 武器・兵器の人道的規制
    • 第3節 世界的な実施メカニズムとしての国際機構
    • 第4節 地域的メカニズム
  • 第4章 人権の国際的保障
    • 第1節 国際機構と人権保障
    • 第2節 国際機構による難民の法的保護
  • 第5章 人道支援
    • 第1節 人道支援の原則と方法
    • 第2節 人の強制的な移動と人道支援 ――難民・国内避難民
    • 第3節 自然災害、事故と人道支援
    • 第4節 複合的な人道危機への国際機構による支援
  • 第6章 人の移動
    • 第1節 人の移動と国際機構の役割
    • 第2節 人の移動に関わる諸課題と国際機構の活動
  • 第7章 国際的な犯罪に対する取組み
    • 第1節 国際的な犯罪と国際的な取組みの類型
    • 第2節 国の共通利益を害する犯罪行為に対する取組み
    • 第3節 国際的な犯罪を訴追し処罰する国際的な裁判所
  • 第8章 開発協力
    • 第1節 開発協力の変遷
    • 第2節 国際機構による開発協力のアジェンダ・セッティング
    • 第3節 国際機構による開発協力の分野別取組み
    • 第4節 国際機構による開発協力の課題と将来の展望
  • 第9章 国際通貨・金融
    • 第1節 国際通貨・金融と国際機構
    • 第2節 国際通貨基金(IMF)
    • 第3節 欧州中央銀行制度(ESCB)
  • 第10章 貿易
    • 第1節 国際貿易機構(ITO)構想から世界貿易機関(WTO)へ
    • 第2節 世界貿易機関(WTO)の活動
    • 第3節 貿易に関する地域的機構とその活動
    • 第4節 途上国と貿易
    • 第5節 国際機構による貿易手続円滑化の促進
    • 第6節 貿易を制限する国際枠組
  • 第11章 環境と資源
    • 第1節 環境・資源と国際機構
    • 第2節 環境と資源の国際的な保護と管理
    • 第3節 地球環境保護のメカニズムの模索
  • 第12章 学術・文化およびスポーツ
    • 第1節 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)とその活動
    • 第2節 ユネスコの遺産保護活動
    • 第3節 国連の学術・研究に関する補助機関
    • 第4節 スポーツにかかわる国際機構
  • 第13章 通信・交通・技術
    • 第1節 交通分野における国際機構
    • 第2節 通信分野における国際機構
    • 第3節 技術分野における国際機構
    • 主要略語一覧
    • 索引
    • 執筆者紹介

著者紹介

執筆者紹介(執筆順、*は編者)

横田洋三(よこた・ようぞう)†
元公益財団法人人権教育啓発推進センター理事長。元法務省特別顧問、中央大学・東京大学・国際基督教大学教授、ILO条約勧告適用専門家委員会委員および委員長。(はしがき)
渡部茂己(わたなべ・しげみ)
常磐大学総合政策学部教授、常任理事。日本国連学会監事、元事務局長。(第1章)
則武輝幸(のりたけ・てるゆき)
帝京大学法学部教授。(第2章)
広瀬訓(ひろせ・さとし)
長崎大学核兵器廃絶研究センター教授。元ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部専門調査員およびUNDPプログラム・オフィサー。(第3章)
秋月弘子(あきづき・ひろこ)
亜細亜大学国際関係学部教授、国連女性差別撤廃委員会委員。元国連開発計画(UNDP)プログラム・オフィサー。(第4章)
滝澤美佐子(たきざわ・みさこ)
桜美林大学大学院国際学研究科教授。元中部大学助教授一橋大学・ロンドンスクールオブエコノミクス客員研究員。(第5章、第8章第3節、第13章第2、3節)
本多美樹(ほんだ・みき)
法政大学法学部教授。(第6章、第11章)
*望月康恵(もちづき・やすえ)
関西学院大学法学部教授。元国連大学プログラム・アソシエイトおよびコロンビア大学客員研究員。(第7章、第8章第1節、第13章第1節)
*吉村祥子(よしむら・さちこ)
関西学院大学国際学部教授。元広島修道大学教授およびオックスフォード大学・ニューヨーク市立大学客員研究員。(第8章第2、4節、第10章)
二宮正人(にのみや・まさと)
北九州市立大学法学部教授。(第9章第1、2節)
柳生一成(やぎゅう・かずしげ)
広島修道大学国際コミュニティ学部教授、日本法令外国語訳推進会議構成員。(第9章第3節)
阿曽村智子(あそむら・ともこ)
学習院女子大学非常勤講師、元UNDPハノイ事務所文化教育顧問。元国連教育科学文化機関(ユネスコ)プログラム・オフィサー。(第12章第1、3、4節)
高橋暁(たかはし・あかつき)
国連教育科学文化機関(ユネスコ)文化企画専門官。(第12章第2節)
山村恒雄(やまむら・つねお)
元宮崎国際大学助教授。元駒澤大学法科大学院非常勤講師。(第13章)

まえがき

はしがき

本書は、2015年に国際書院から刊行された『国際機構論(総合編)』に続く『国際機構論』の概説書3巻セットの2巻目となる「活動編」である。このシリーズは、間もなく出版が予定されている第3巻「資料編」をもって完結することになる。この3冊を1セットとする国際機構論概説書出版企画の趣旨とその活用法については、「総合編」の「はしがき」で詳しく書いたのでここでは省略する。ただ1点お断りしておきたいことは、この企画では「総合編」、「活動編」、「資料編」の3巻でひとまとまりとなることを想定しているが、同時にそれぞれを独立の書物として、目的に沿って利用できるように配慮しているということである。この活動編も、今日各分野で活動する国際機構の紹介と解説に焦点が当てられているが、同時に各機構の歴史的発展や組織上の特徴についても必要に応じて取り上げ、総合編で扱った共通の問題点である「国際機構と国家の関係」や「国際機構の内部構造」などにも適宜言及することによって、1冊の国際機構論の概説書として使えるように工夫してある。

本書は、総合編刊行後、それぞれの分野を専門とする研究者が各章を分担して執筆した。その過程では、何度も会合を重ねてお互いの原稿を検討し、編者が全体に目を通して表現や内容の統一を図った。この作業に2―3年の年月を要し、このたび刊行のはこびとなった。この「活動編」については、「総合編」の執筆者代表であった横田洋三は代表を退き、各機構の活動に精通している研究者に執筆を委ねた。活動編における横田の役割は、執筆者や編者から提起された疑問点に対して意見をのべ参考に供するという範囲に留まった。したがって、この「はしがき」も、「執筆者一同に代わって」ではなく「執筆者一同のために」とした。本書の執筆者は、これまで25年以上続いてきた国際機構論研究会のメンバーとして、人により期間の長短はあるが、私とともに、国連を中心とする国際機構の研究に携わってきた人たちである。そのほとんどは、大学で国際機構の研究や教育に従事し、またそのうちの何人かは特定の国際機構の活動を担った経験をもつ人である。その人たちがこのような力作を分担執筆し刊行にまで漕ぎつけことを心より誇りに思う。また同時に、この間研究会の会合において、それぞれの専門の立場から貴重な情報や意見を提供して議論を活発にし深めてくれたことに対しても、心より感謝したい。

今日国際機構の活動の範囲は大きく拡大し、国際紛争の解決や戦争の防止、軍縮・軍備管理などの政治的分野から貿易・開発・通貨金融などの経済的分野、さらには人権・人道・犯罪取締り・環境資源・学術文化・スポーツ、交通通信・情報などの社会的・技術的分野など、私たちの生活全般に及んでいる。私たちの生活のなかでいずれかの国際機構が関わらない問題を見つけることのほうが難しいというのが現実である。これは、グローバル化が急速かつ不可逆的に進行している今日の世界の姿を、如実に表している。今日においては、私たちの安全、安心、豊かさ、教育、福祉、健康、労働、文化、環境、資源すべてについて、国連、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)などの国際機構の存在と活動を抜きに考えることはできなくなっている。本書を通して、世界は狭くなり、相互依存関係がかつてなく深まり、個々の国家のみでは対処できない問題、つまり地球的規模の問題がその存在感を大きくし、そうした現象に対処する最善の方策が国際機構を通しての問題解決であるということが理解されることを願っている。

また、本書は、現存の国際機構が必ずしも期待された目的実現に適切に対応していない現実にも目を向けている。加盟各国から提供されている財政的、人的、知的資源が、必ずしも効率的、効果的に活用されていない事実も率直に指摘している。そしてそうした課題克服の方策にも言及する。読者には、本書をとおして、今日国際機構が私たちの生活を潤し充実させるために果たしている重要な役割を知ると同時に、その問題点にも目を向け、どうしたら国際機構が私たちの生活をより良くするために今以上の働きができるかを一緒に考えていただきたいと思う。そして、さらに、そのために自分たちが何ができるかを考え、できれば行動に移していっていただきたいと考える。それが国際機構の研究でもよいし、国際機構の活動を支える各国の政策や財政的支援に影響を及ぼす活動であってもよい。また、実際に国際機構の職員となって国際機構の活動にみずから参加することであってもよい。要するに、世界と人類の将来が、国際機構の効率的、効果的な活動の成否にかかっているということを、この書物をとおして理解していただければ幸いである。

本書の刊行にあたっては、「総合編」に引き続き国際書院の石井彰社長に全面的ご協力をたまわった。心より感謝申し上げる。

2018年9月1日

執筆者一同のために

横田洋三